武田康廣「のーてんき通信―エヴァンゲリオンを創った男たち」を今更読んだ
ガイナックスの史実が大方岡田斗司夫の口から語られたものだとしたら、それは半分は間違っているのかもしれない
ロフトプラスワンなどに足を運ぶほどの岡田信者ならば、尚更この本を読まない手はないだろう
例えるならライブドア事件におけるホリエモンと宮内亮治のエッセイを読み比べるようなものだと思う
やはりお互い記述に微妙なズレというか差異があるし、自分のウィークポイントになる様な記述は控えられている
内容としては本当に濃い本だった、アニメ業界の内情本、スタッフの私的エッセイとしては富野由悠季の「だから僕は・・・」に匹敵する
いや、それ以上かもしれないと思った
こういうジャンルの本にしては珍しく読み応えのある部類だったと思う
庵野秀明、山賀博之、赤井孝美による武田欠席裁判という座談会が巻末に載っていたのも思わぬ収穫だった
近年庵野率いるガイナックスの年配スタッフが独立し、カラーという会社を立ち上げたのだが、
それにより若手の今石洋之をヘッドとして再スタートを切った現状のガイナックスはこの本で書かれている組織とはほぼ無縁のものである(ちなみ現状のガイナックスに関して僕はまったく興味をそそられない)
現在いわゆるエヴァンゲリオンあたりまでのガイナックスの作品及びスタッフを「オールドガイナ」と呼称することがネット上では間々なされるようだ
蒼きウル直後の社員大量解雇という重要なエピソードが本著では書かれているのだが、確かにこの辺りからガイナックスにおけるスタッフ陣営が大幅に刷新されていった印象がある
作品を作っているスタッフとは別に取締役やプロデューサーなどの経営陣の入れ替わり立ち代り、軋轢齟齬
ゲーム部門、編集部門、ゼネプロとしてのガレージキットを主とするグッズ販売部門、それら会社の部門一つ一つを巧く纏め上げられなかったという会社組織の脆弱さ、経営の難しさ・・・
この辺りの内情というか背景がかなり詳細で面白くて、他のアニメ業界系の暴露本でもなかなかお目にかかれない
ガイナックスという歴史そのものにドラマや作家性が多分に見て取れたし、しかもそれが予想以上だったので心底感心した
楽しませてもらった、もっと早く読んでおけば良かったと後悔している
最近は本屋のサブカルコーナーにあるアニメ系のカルト書籍も図書館で探せば大抵は読めてしまうけど、この本はかなり前に絶版しているし、増刷もしてないはずなので、なかなか見つけられないんじゃないかと思う
もし興味をそそられた方はオークションなどで手ごろな価格で出品されていれば購入することをオススメしたい
アニメの業界裏に興味がある人にとっては相当な名著であることは疑いないと思う
しかし、アニメ業界ってこんなにも汚いのか――――。
- 作者: 武田康広
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2002/03
- メディア: 単行本
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