アニメで最初に女性を描いたのは?

戦闘メカザブングルにおける男性観・女性観というのは
殊アニメにおいては唯一無二のものなのかもしれない
それは田嶋陽子ばりの行き過ぎたフェミニズムに則ったものであり
視聴者の大多数である男性に酷く違和感を覚えさせる
ある種の女尊男碑的な男女関係を描いているからであろう(カッコ良く文芸に例えるなら後の村上龍だろうか)
30年近く前の作品でこの先駆性というのは、素直に凄いと思える
富野監督の作品暦でも僕にとってザブングルガンダムイデオン以上に大切な作品であり、今も尚より多くの人に見てもらいたいと思っている



ザブングルの女性キャラとしてやはり一番インパクトがあり、語られやすいのはグレタ・カラスであろう
まず見た目の時点であからさまにフェミ臭を拭いきれないキャラデザインとして描かれているのだ
とてもグラマラスとは言い難い肥満体系、ビキニを基調にした半裸のコスチュームを着て、あくまでも可愛気のない中年女性としてデザインされている
女性と言えば若くてピチピチのロリ系美少女にしか目がいかない大半のアニメの男性視聴層からしてみればどう見ても目の毒だ
要するに作り手のセンスとしては非常にあざといものなのだが、その狙いは当時でも10年は早かったのだろう、いや、今でも充分通用するかどうかは怪しい
内面における性格付けとしてもかなりキツイものがあり、単にナルシストという訳ではなく、女性全般を大いに肯定するフェミニスト(敢えて嫌な言い方)なのだ

ジロン「時には女々しくなる!」
グレタ「女は強いんだよ!そういう時は雄雄しいって言いな!」
(第42話 グレタ吠える より )

この応酬は今見ても強烈であり、清清しくもある
尤もザブングル以降の富野作品にしても女性賛美はここまで露骨ではない
むしろ後の宮崎駿作品において描かれる様になったフェミニズム描写に近いものだろう
しかし、当時としてはあまりにも過激な台詞だ(感情の方が先走りし過ぎて、そもそもの作品の世界観を完全に無視しているし)

ザブングルという作品そのものに言えることだが
特に中盤以降、何故女性の生き様を描くことに特化し、そしてそのまま終止一貫せざるを得なかったのか・・・・
僕としては、ザブングルという作品が前後の富野作品の作風に引っ張られているという印象があまりないだけに非常に突飛に感じられてしまい、気になるところではある
残念ながらザブングル関連の富野語録というのはあまり充実していないせいもあって、テーマの核心には殆ど触れられていないような気がする
いつか真相を知りたいところではあるのだが



ザブングルは女性賛美をごり押す一方で、父性の権化とも言うべき、男の根拠のない傲慢さみたいなものをあげつらい、嘲笑する描写も数多く見られるが
僕の印象ではキッド・ホーラによるエルチに対して言い放った以下の台詞にそれらは全て集約されている様な気がする

「そッ、そんなッ、条件なんて大したことはありません。あんたが俺に優しくしてくれて、三度三度旨い飯を作ってくれりゃあいいんです」
(第15話 泥まみれ、やけっくそ より)

そうそう、男ってのはこういう馬鹿なことを言ってしまう生き物なんだよ
顔から火が出るくらい恥ずかしくて、思わず笑い泣きしちゃうくらい情けない男の台詞・・・
これぞまさに富野節、御大の本領発揮だ(だから富野信者はやめられないのよね)

戦闘メカ ザブングル DVD-BOX PART1

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