『海のトリトン』ロマンアルバムから西崎義展メッセージ

海のトリトン」――この作品は、私のアニメーションの処女作です。
昭和47年、全27話のTVシリーズとして放映されて以来、「海のトリトン」は“幻の名作アニメ”とよばれ、現在も再放映を望む声がたえません。
当時、1話完結の連続シリーズが多かった中で、この作品は一貫したストーリーを持たせ、私なりにイメージを展開した思い出深い初プロデュース作品なのです。


アトランティス人の子孫、少年トリトンが海の平和のために戦うこの物語は、手塚治虫先生のすばらしい原作と、アトランティス伝説の神秘性を加味した壮大な海洋ロマンです。
トリトンは手ごわいポセイドン族との戦いの試練に立ちむかいながら、いろいろなことを学んでいきます。
つまりこのドラマは、「宇宙戦艦ヤマト」に続く人間の成長ドラマの源流なのです。
ヤマトと違って男女の愛こそありませんが、トリトンの中には人間の愛、人類愛が一貫して流れています。
そして、物語の背景の壮大さ、音楽との効果的な結合など、ヤマトとの共通性に気がついていただけると思います。


また、トリトンのふるうオリハルコンの剣は、トリトンの思想の表現です。
精神力がトリトンの中で充実して、初めてこの不思議な剣は威力を発揮するのです。
私はここに、人間の生きる力、強い精神の原点を描きたかったのです。
そして、このテーマは、これからも私の作品の中に、脈々と生き続けていくと思います。


いま、この思い出の作品が上映され、さらに一冊の本として甦るわけです。
みなさんがこのトリトンを通して、よりいっそう、自然を愛する心を養っていただければと、願ってやみません。


『海のトリトン』ロマンアルバムから富野メッセージ - 所詮は素人の日記帳~トミノにまつわる放言集~ - だからtominoは・・・

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