2006年5月6日

とにかく、何はともあれ平野綾に会いに行ってきた。会場はアニメイト店内ではなく、メロンブックスのあるビルの4階で行われた。
アニメイトの真ん中に全員集合して、それから会場へ向かうというケースだったので、周りには晒し者もいいところだった。
客層は、とにかく整理券順に並んだところで、かなり分かりやすい様相だったと言わざるを得ない。
僕は20番だった。10時五分頃メイトへ行って整理券となる番号スタンプを押してもらう。
まず一番はいかにもって感じの一応それなりに清掃したような感じがこれまた痛いチビ野郎(推定22歳くらい)だった。
それから19番くらいまで、工事現場のオッサンみたいなのとか、メガネが分厚い教授みたいなオッサンとか、ロン毛というよりただ面倒くさくて切らないだけみたいな風貌の奴とか、200キロぐらいのどうしようもないデブヲタク
とにかく19番くらいまでおそらく平均年齢は30を優に超えていた。アイドルのイベントというものが、たとえアニメイトのようなところの小規模のものでさえ、このような「オタク」というものが確実に存在し得る空間であるということをまざまざと見せつけられた。
僕の横は多分僕より年下の少し背が低い少年、その後ろの独り言でブツブツキレている奴が非常にウザかったが、後ろの方は、まぁ大体僕と同世代かちょっと上かくらいの感じで、女子も二人ほどいたと思う。
けど、とんでもない勘違いなイケメンとか、あるいは正統派の男前みたいな奴は皆無だった。
とにかくみんな、汚らしい奴ばっかだった。ルックスだけ見ても普段から自信のない僕が、この中なら一番マシなんじゃないかと、本当にそう感じた。
まぁこれが関東圏へ行くとそうでもないのだろうというのは容易に想像つくが。


会場へ入ると、別に整理券順に座る場所が決まっていた訳ではなく、椅子が人数分ないので早く整理券をもらった方が有利というだけだった。
よって僕が入ったときにもう既に2つしか空いていなかったのである。始まるまで僕は、握手のときどうやって話すかというイメージトレーニングをしつつ、敵状視察・・・と言っても、何かどうしようもなくエグいメンバーばかりで明確に「敵」などと明示することさえできない。
始まる前に綾ちゃんの関係者の、明らかに普通で害のない今風の30代前半みたいな人がマイクで話す。
ドアを開ける役の人が回って綾ちゃんが入ってくる。完璧だった。100%級の正統派美少女だった。想像以上だったし、逆に普段見ている動画のイメージにあまりそぐわない、という訳でもなかったので、カメラ写りは良い方なのだろう。
とにかく素晴らしかった。二の腕の太さも、若干細すぎるかなと、本物を見るまでは懸念していたのだが、まさに杞憂だった。
プロポーションには非の打ち所がなかった。見事なまでのペッタンコ具合も想像以上の好印象だった。
綾ちゃんが話をする時に、色々と、というかさっき書いた整理番号1番はどうやら追っかけ団長だったらしく、とにかく無遠慮に振舞った。
しかもそれが周りのヲタ(主に前列)に飛び火するので、正直痛々しくて直視できない。もちろん綾ちゃんはまさにアイドルといった感じの満点の笑顔で対応していたが、僕はそういう彼女をやや痛ましい眼で見つつ、同時に
「アイドルのイベントとはこういうものだ」
そう実感せざるを得なかった。


その後、どういう訳か会場場所を変更したからという理由で、歌を披露してくれることになった。しかも2曲も。
案の定会場はどよめき立つ。すると、まもなく整理券番号1番の追っかけ団長がみんなに、というか仲間にペンライトみたいなものを渡して手はずを整える。
綾ちゃんはいかにもそれ相応の対応で優しく迎える。この空間はまさにアイドルのイベント会場なのだ!
僕はまだ否定したい衝動を抑え、目の前の光景を認めなければならないことを自分に言い聞かせた。
曲が始まると綾ちゃんは本当にそつなく歌ってみせる。振りも間々入ったりして、口パクではなかったし、やはりアイドルそのものだった。
それはそうと、例の追っかけ団長がどうしようもない。前列中央なのに立ってライトを振るというのは明らかに他の客に対する配慮というものが欠落している。
何人かの仲間は立ち見だったが、ジャンプして回転してみせたり、奇声を発したりする。世も末である。


とにかく歌が終わり、握手会への準備となり、一度綾ちゃんは楽屋へ戻る。と言ってもすぐ出てくる。
僕はアイドルブリブリ路線の営業用の平野綾は十分に堪能したので、もっと自然な感じの表情や仕草を見たかったのだが、いかんせん進行のテンポが早かったのであまり見ることは叶わなかった。
握手一人目はいきなり200キロの巨漢で、汚らわしい最低のヲタクであった。
こんな奴が生きていていいのか?と思ったりもするが、そこは同じ人間である。
綾ちゃんは凄かった。嫌な顔は全くしなかった。今まで通りアイドルの表情をしていたのである。それは、この後のどんなキモい男共に対しても同じことだった。
だから僕の番になったとき、別段良く接してくれる訳ではない。(別に自惚れている訳ではない)それを考えたとき、綾ちゃん本人に対して萎縮してしまって手もまともに握れなかったし、言葉が出なかった。
とにかく色々なプレッシャーが一気に噴き出してきたのであろう。僕はどうしようもない人間であるということを改めて自覚する。(END)