『ブレンパワードスパイラルブック』より重田敦司インタビュー

―どういう経緯で参加されましたか?
最初に「殺伐としたような話になるならやらない」という話は監督にしました。
富野さんも「言われなくてもそうはしないよ」と、言われたんで「じゃあ、やります」と。


僕は殺伐としたり、過剰に病的な話が大キライなんです。スタジオに来た永野(護)さんが
「ある程度病的なもののほうが絵になることがある」と、言われたときに、僕が「場合によってはそうですね」と頷いたら、富野さんから「重田くんがそういうこといっちゃマズいだろう」と、いわれたりしたこともありましたが過剰でなければ、ある程度はOKだと思う。


悲惨なことをわざわざ見せてね?悲惨でしょと描いてもしょうがないんですよ。結局そういうのが好きな人には、娯楽になっちゃいますから。


―制作中のエピソードを教えて下さい。
富野さんに、大きい目がキライだと言われました。だから、目を小さくして、しかもいのまた(むつみ)さんのキャラからはずれない、ということで悩みましたね。


印象に残っているのは、18話のラストのカット。勇の泣いている姿です。「悲しかろう」と思いながら、描きました。


―作画面ではどこに留意しましたか?
最近のアニメの演技って過剰で、僕はついていけないんです。普通に走ってくれればいいのに、こんな風(と不自然な動き)にクビ振ったり・・・・・・。別にその仕草がみせたいわけではないわけですから。
だから富野さんも、レイアウトチェックしながら怒ってましたね。まあ、レイアウトは「これでいこうと思うけどどうですか?」というヤツなんで、怒ってもしょうがなかろうというのはあるんですが、監督もレイアウトを見てるといろいろ溜まるものがあったんでしょう。


僕の担当回は、エフェクトを除けば、ほとんど3コマでやっているはずです。動きじゃなくて、演技を見せたいんだ、ということです。
途中でぬけた『Vガンダム』でも、はじめは3コマ影なしと決まっていて、それにも納得していました。変なところにこだわるより、昔風のアニメーションでも演技は伝わると思っています。


それとは別に、3話の泥流とかエフェクトにはこだわっていました。最終回の波とか嵐のセルにデルマを入れていたら、『∀ガンダム』の安田(朗)さんに「そんなことまでやるんですか?」と聞かれました。「いや、好きでやってるんです」と答えたんですけれど(笑)。


1999年8月1日 第1刷発行



先日念願の「スパイラルブック」を入手したので掲載
今回このインタビューを読んで個人的に重田さんの作画スタイルで釈然としなかったものが、全て氷解した
『ブレン』も『キングゲイナー』もそうだが、重田さんの作画担当回は通常の回と比べても
止めや口パク、セル移動のみで動いていているカットが多く、むしろ3コマ以下になっていることも多い
しかし、エフェクト等には相当こだわっている訳で、当時からその辺のウェイトの置き方が僕的に疑問だったのだ

ブレンパワード・スパイラルブック (Gakken mook)

ブレンパワード・スパイラルブック (Gakken mook)