巨神ゴーグのコメンタリーで本当に面白いのは

巨神ゴーグ』DVDのオーディオ・コメンタリーで何より興味深かったのは、
あたかも時効完成後の罪人のごとく、安彦良和が本編を見て――主に作画の面に関してだが――むやみやたらに自画自賛するところだ。

氏がアニメの実制作から完全に手を引いて、もう20年以上になるのだろうが、絵描き(アニメーター)としてのプライドは、当然、還暦を過ぎた今も変わらずに持ち続けていることだろう。
その気概はファンとしては頼もしくもあるのだが、
それだけに――これは本人も自覚していたであろうことだから言うのだが――「アニメ作家」としては、ついぞ大成することはなかった、その悲哀というものも、同時に見え隠れしているようにも思えて、ひどく切ないものに感じられた。

そして、それが今となっては的な、完全な諦念の差し掛かりから来るものではないということも、深く感じ入った理由であった。


と言うのも、今も昔も安彦良和が天才であることは間違いない。
ただ、アニメーションという創作媒体そのものが氏を選ばなかったというだけなのだ。
そのことに自覚的であったからこそ、安彦はアニメから手を引いたのだから。
ゴーグのコメンタリーには安彦の語り口、その言葉の端々にそれらの悲哀が滲み出ているように思えてならなかった。

やはり、安彦は「アニメ作家」たり得たかったのではないのか、漫画家でも、絵描きでもなく――。
本人にとっては迷惑かもしれないが、そう考えてしまう。


ガンダム30周年でなんか書こうと思ったらもう師走だよ 宮崎駿より前に宮崎駿になろうとした男

巨神ゴーグ DVD-BOX

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